クレタ人の帰還
念願かなって、ついに仕事は引退。隠居後はじめてのゴールデンウィークを過ごした。先生は台北で仕事だし、したいことも特にないので隠居後の事務仕事に精を出したり、電車に乗って展覧会や映画館に出かけてみたりした。夜は、自分とあまりにかけ離れたジャンルとして、金融に関する映画をちょこちょこと観る(『ウォール街』など)。そしてよく飲み、よく寝た。 手すさびにネットサーフィンをしていて面白かったのは、古くから愛読していた数学者 Dr. Haraの隠居ブログ にたまたま出会ったこと。50代に入ってすぐの頃に引退したようだ(ということは、私のほうが3、4年早い)。お酒を入れた水筒を携えて歌舞伎や落語をよく観にいっていて、「隠居」とはどういうことなのかをそれなりに意識されていそうな内容。こういう生き方もいいな。2010年代半ば以降は本業が忙しすぎて氏のブログをちゃんと読めてなかったので、今になってこういうかたちで再会ができたことがうれしい。ブログで紹介されていた荒俣宏『大都会隠居術』をさっそく取り寄せる。 連休中、それなりに流行を追ってみたり、時事的な問題にかかずらったりする必要が今後まったくなくなった、ということに気づいてハッとした。考えてみると当たり前のことなのだが、これまで四半世紀ほど関わってきた出版という仕事とは正反対で、この境地は想像だにしていなかった。ゴールデンウィーク中に観にいった映画が空音央で、展覧会が岡﨑乾二郎というのは、魂がまだこの境地に追いついていない証拠。